まるりょ 小説 蜜柑と檸檬 その1

20年前僕たちは殺風景なスタジオで出会った。

「丸山君って関西出身なん?俺、大阪出身やねん!」

無邪気な君が笑って話しかけてくれた。

これが亮ちゃんと僕の初めての会話だった。

僕は2回目のオーディションで、当然知り合いなんているわけもなく、そんな中君が話しかけてくれたことが嬉しくて、Jrになってからは、ほぼ毎日一緒にいた。

二人で一緒にたくさんロケをした。二人で一緒に遊びに行った。お互いの家にも行った。高校も同じだった。僕の人生にはかけがえのない人になっていった。

そして僕たちは関ジャニ∞としてデビューすることになった。

デビューしてから亮ちゃんは一気に人気に勢いがついた。

テレビドラマには出ずっぱりで、関ジャニ∞の中でも1番といえるくらいの人気ぶりだった。

 

「亮ちゃんはすごいなぁ~」

なのに僕は、迷走してデビューしても何も結果を残せないでいた。

亮ちゃんはドラマで十分忙しいのにギターの練習も欠かさずしていた。

それなのに僕は別にやりたくもなかったベースになってしまい、練習もおろそかになっていった。

 

君との差を感じ始めた時期だった。毎日仕事をしている亮ちゃんが羨ましかった。

「まる。なんちゅー顔してんねん」

「…っふえ?」

僕の目の前にいつも間にか亮ちゃんがいた。

「タヌキみたいな顔してたで」

亮ちゃんが笑いながら僕のほほをつまんだ。

「うそやん!ちょっとぼ~っとしてたわぁ」

誰もいない楽屋に僕の声が響き渡る。優しくつねられた頬が熱くなっていくと同時に亮ちゃんの顔が僕に近づいてくる。

「っ…」

あまりにも不意打ち過ぎて息ができなくなる。

きっと一秒にも満たない、でも僕にはそれ以上に長く思えて…

 

亮ちゃんは時々僕にキスをする。

それにどんな意味があるのかは僕にはわからない。

 

 

 

だけど、君はわかっているかな?僕のこの心の葛藤を…亮ちゃんに対する愛しさと憎しみを。

 

君は多くを語らない、だから時々君が見えなくなる時があるんだ。

「なんやぁ~、いきなりでびっくりしたわ!!」

僕は平然を装う。

「元気出たやろ」

亮ちゃんはほほえみながら言う。

きっと亮ちゃんは僕の心の内を察してくれているのかもしれない。

「まるも疲れ取れたら練習に来いよ、みんな待ってんで」

「うん、ありがとう。あと少ししたら行くわ」

「ほんなら、また後でな」

亮ちゃんが僕に背を向ける。亮ちゃんが楽屋を出たと同時に僕はひどい虚無感に襲われた。

「俺も、頑張らな。」

そう心の中でつぶやいた。