まるりょ 小説 蜜柑と檸檬 その2

「あれ?丸髪切っとるやん!」

亮ちゃんが楽屋に入ってくるなり僕のほうを指さした。

「せやで~今回は結構短めにした!」

「ええよ~丸、俺その髪型すきやわ~!!」

亮ちゃんが屈託のない笑顔で僕の髪をほめる。それがあまりにも嬉しくて亮ちゃんを直視できなかった。

「えへへ、ありがと亮ちゃん」

 

きっと誰に髪のことをほめられたって、一番うれしいのは亮ちゃんだから。

僕は本当に幸せ者だ。

 

「亮~俺は髪の毛の色とか変えても褒めてくれへんやんけ~~」

ギターを弾いていた安が、亮ちゃんに話しかける。

「章ちゃんはちょくちょく変わるからええねん、てか奇抜すぎてあんま褒めたない(笑)」

 

「なんやそれ!亮最近俺につめたいわ~~」

安が子供みたいに口をとがらせて、拗ねる。

「てか、章ちゃんあの曲のサビのコードできた?」

亮ちゃんが安ところに行き、楽曲制作の話を始めた。

 

僕は同じメンバーにさえ嫉妬してしまう。

そんなんじゃだめだとわかっているのけど

喉まででかかっている「行かないで」を必死に抑えた。

 

あの二人の音楽に対する情熱は僕と比にならない。

だから僕が入れる余地はない。

 

そんな二人を横目に僕はそっと楽屋を抜けた。

 

トイレに行くと村上君がいた。

 

「おぉ、丸か。って髪切ってるやんけ」

「うん、」

 

「うんってなんやねん」

「・・・」

村上君がすかさず突っ込む。

「最近元気ないけどどしたんや、なんか思い詰めてんのんか?」

村上君はメンバーのことをよく見ているから、少しの変化にすぐ気づく。

「いや、そんなことはあらへんのやけど・・」

「そうか?亮も気にしてたで?最近丸が元気がない元気がない言うて」

亮ちゃんも気にしてくれてたんだ。

いっそ村上君に全部言ってしまおうか、そうすれば、少しは気持ちが楽になるのかもしれない。

「あんな、村上君・・・」

「おん」

「実はなぁ~…最近便秘やねん!なかなか出えへんから、体調も優れんくてなぁ心配かけてごめんなぁ」

 

「ほんならお腹ちゃんと温めて病院でも行ってこい、糞詰まりしとるかもしれへんで!」

「うん分かった~、ありがとう」

きっと村上君をこんな嘘でごまかせるはずがない。

でも、言ってはダメだと、心の中の僕がつぶやいた。

今までの関係を壊すことになるかもしれない。

それだけは、あってはイケナイこと。

 

僕のこの思いは自分の心のうちに秘めておくしかないのかもしれない。

そして一生誰にも言わずに、過ごしていくのかもしれない。

 

でも、ひとつだけわかるのは、大きくなりすぎたこの思いを

僕が隠し通せるはずはないってこと。